本当にあった復讐の話

復讐の話をまとめたサイトです

【96話】盗み癖

母親が盗み癖のある人だった。
母は専業主婦。
でも父は会社でそれなりの地位にいて金に困っていた記憶はないから
生活に困ってとかではなく本当に「盗み癖」としか言えない一種の病気だったんだと思う。

うちは二人兄弟で、兄は母にすごく可愛がられていた。
俺はあまり相手にされなくて、服も全部兄のおさがりで
兄はいつも長い時間母といっしょに風呂に入ってたのに
俺は「お湯が汚れるから入るな」と言われて、歯ブラシも俺のは買ってもらえなかった。
子供時代は「バイキンマン」と呼ばれ、クラス中に嫌われて過ごした。
母はよく万引きしたくなったら俺を遠くのスーパー等に連れて行き
万引きした品を俺のポケットや裾につっこんでいなくなった。
たまに目撃証言してくれる人もいたが
コギレイな奥様と髪ネバネバのきったないガキとでは奥様が信用されるに決まってる。
引き取りに来てくれるのはいつも父親だった。
父は母の言うことを真に受けて
俺を風呂嫌いで歯もみがかない盗み癖のある一種の発達障害児だと思っていた。
とあとで聞いた。

そんなある日、いつものように母が俺を買い物に連れだした。
兄じゃなく俺だけを連れていくときはたいてい盗み癖を出すとき。
だから俺はその店に着いて早々、買い物に夢中な母親から離れて店の外に逃げて隠れた。
母に見つからないよう、一定時間おきに隠れ場所を変えたり
いろいろ知恵をめぐらした記憶がおぼろげにある。
母は俺を探してた店の中をうろついていたが、なかなか見つからず
そのうち盗み癖のムラムラがおさまらなくて何かパクってしまったらしい。
いつもなら罪を押し付けられる俺もいないし
母はそのまま店員に見つかって御用。
身元引受人として呼ばれた父は、また俺かと思いきや犯人が母で仰天。
しかも俺はその時点でまだ行方不明。

その頃、俺は「暗くなったから家帰ろう」と思って道を歩いていた。
母親は先帰ったんだなーと普通に思っていた。
でも真っ暗な夜道を歩いて帰るガキに驚いた人が車で拾ってくれ
「こんなに不潔で痩せていて、夜道を一人で歩いているのはおかしい」と思ったみたいで
コンビニでおにぎりを買ってくれて、児童相談所かな?どこかの行政に電話してくれた。


なぜか施設じゃなくすぐ病院に行くことになって(このへんのいきさつはよくわからない)
2日くらい病院にいたら両親が迎えに来た。

復讐はこのとき。
医者も看護婦もやさしかったし話聞いてくれたし、今この場にいるのはみんな俺の味方!って
確証がなぜかあったせいか、
自分でもオーバーなくらい叫んで、泣きわめいて、母親を指さして
「この人怖い。この人ともう一緒に住みたくない。またドロボウを自分のせいにされる。
お風呂に入れてもらえない。ゴハンももらえない。毎日叩かれる。
この人のとこに返されるなら死ぬ」
ってギャンギャン騒いだ。
ちなみにゴハンもらえない&叩かれるは嘘。
めしは食わせてもらってた。ガリなのは体質。母親は俺に触らなかったから叩かれたこともない。

母親は「この子は嘘つきでバカでキチガイなんだー!」って反論してたが
その場で母親の言うことを信じてる人は一人もいなかった。
その場にいる全員が俺のことを信じていて、それが伝わってきてすっごく気持ちよかった。


俺はそのあと数日まだ病院にいて、帰宅したらもう母親はいなかった。
二年後くらいに正式に離婚したようだ。
(このへんの数年の記憶はあやふや)

兄とはしばらくぎくしゃくしたが、高校に上がるくらいの頃には普通の関係になった。

ひとつ残念だったのは、俺はあの母親をずっと「継母だった」と思い込んでたんだが
最近父に聞いてみたら実母だったっていうこと。
実の子なのになんで俺だけ差別されてたのかの理由は、いまだわからずじまい。

当時のことを思いだそうとすると脳が拒否するのか
あいまいな部分が多いんで、変なとこがあったらすまんね。

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