【365話】「お前が悪いのに警察呼ぶんかーーー!」
車通勤の帰宅途中でのこと。帰宅ラッシュで幹線道路が混雑していて抜け道を通ろうと小さい道から、大きめの道へ右折で出ようとした。
が、死角になっていたようで直進車がこちらへ向かってくるのが見え慌ててブレーキを踏んだものの、ガッシャーーーーン!
相手と自分の車の前方がぶつかった。
なにもかもスローモーションのようで、ブレーキが間に合わず車がすべっていく様がコマ送りのようだった。
それなりに衝撃はあったが、お互いケガもなく事故処理のため車外へ出ると、相手の姿にびっくり。
スキンヘッド、DT松ちゃんのような刺青柄のTシャツ、ニッカポッカ(幅のある長ズボン)の中年男性で
「ねえちゃん、どこに目ェつけとんじゃ!」
と怒鳴りつけられた。
暗闇の中、ヘッドライトに照らされたその姿は迫力ありすぎた。
こちらが悪いので謝罪をし、賠償すると伝え警察を呼ぼうとしたら
「車なくて、どう仕事せぇってことや!」
「金はらえっ!車 直せ!! 誠意っちゅうもんはないんか?」
「お前が悪いのに警察呼ぶんかーーー!」
と相手はおさまらず怒鳴り続け、どうしようもないので強引に110番した。
すると突然、トーンダウン。
「これぐらいなら自分で直すわ」
「たいした事故じゃねーな。俺もあせりすぎた」
と言い出した。
実際、相手の車はバンパーが一部へこんだ程度だったし私の車はへこみもなく塗料が付着しているくらい。
でも私はそのまま電話を続けた。
つながった警察は
「今ねー、事故処理30~50分待ちなんだわ。交通量多いし、もっと待ってもらうかもしれんな。自走できる? 署に来てくれたほうがいいかもね」
と。
相手は私が本当に警察と話しているとわかるとまた怒り出し、
「ほら、こっちは誠意見せてんぞ!」
と土下座をしたり
「これで満足だろ!」
とお札を渡して車に戻ろうとしていたのでこちらも相手には聞こえないように
「相手から怒鳴られてるんです。逃げそうだし怖いです」
と必死で訴えた。
怒鳴り声が電話ごしに聞こえたのか、最寄の交番から警官を向かわせると言ってくれた。
警官の到着を待つ間も相手は知り合いに電話して
「俺さー、車ぶつけられてさ、明日現場行けないかもしんね。すっげー迷惑かけるけどごめんなー」
聞こえるように話し続けた。
事故過失はこちらにあり、本当に申し訳なかったので
「すみません、すみません」
と言い続けたが、
「お前は俺の人生をつぶした」
とまで言われた。
到着した警官に身分証や車検証の提示をもとめられると
相手「俺、免許ねえわ」
一同、ア然。
警官に取り囲まれ、尋問が始まった。
どうやら飲酒運転をして免許停止中だったらしい。
その間、私は一人で車中待機。
110番につながるまでとつながってから、そして警官が来るまで危険を感じていた身には、とてつもなく長く感じて安心感から号泣した。
そこへ携帯へ着信。
警察から警官が到着したかの確認だった。
号泣していた私は
「ゔぇ、来で、ぎで、ぐでま゙じだぁ~ っひっく」
とうまく話せず何があったのかとびっくりされ、しばらく泣いてから
「ちょっと怖い思いをしたもので・・・」
とやっと答えることができた。
現場の警官へも事情が伝わり、あれから相手の男性に会うことはなかった。
それからようやく事故処理車が到着。
ただの事故なのに他にパトカー数台、野次馬もそれなりに集まり、大事件のようだった。
相手はパトカーで署へ連行され、私も無免許を立証するための参考人として事情聴取された。
調書にもパターンがあり、通報させまいと脅した行為が重くみられ
(悪い)犯人へ悪印象しかなく、厳罰に処してほしい
(普通)犯人は法に基づき、厳正に処してほしい
(良い)犯人は十分反省しており、温情をもとめたい
警察には(悪い)をすすめられたが、相手が怖いので(普通)にした。
前科もあったようだが具体的には教えてくれなかった。
事故対応のため、警察仲介で連絡先交換をしたが相手の携帯は料金滞納のため使用停止中とのことで友人の携帯を取り急ぎの連絡先としていた。
車も無保険ではないらしいらしいが、友人名義だった。
保険屋によると、連絡もつかなかったらしい。
相手があまりにも怒ってたのは無免許バレを恐れてのこと。
こちら過失の事故だったし、車ないと不便きわまりない地域なのであまり不思議に思わなかった。
冷静になればおかしいと気付けたはずと反省。
そしてどんな事故でも警察をよぶべきと実感した。
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