【223話】「なんでこんな事になったんだろうな」
家の母がした事何だけど、今にして思えば…と言う話。最初に言っておくけど、家の母檻の付いた病院から一生出られない人ね。
実家は田舎で、両親は結婚してすぐ祖父母と叔母と同居。
こいつらはホント性悪で、父は母や私たちがいびり倒されてるのにも我関せずだった。
叔母は結婚して家を出た物の、実家に入り浸りで、母と私たちをまるで召使いのように扱い、気に食わなければ祖父母たちと一緒になって悪口三昧。
家は3人兄妹なんだけど、実は一番下にもう一人妹が居た。
その妹は母が目を離した隙に家を抜け出し、用水路に落ちて亡くなったと聞いていたんだけど事あるごとにその事を責めていた。
そして叔母に息子が生まれると、母はまるで王子様のようにお仕えし、欲しい物は何でも与え、我儘はすべて聞いてやり、祖父母や叔母達も当然の様な顔で母に育児を押し付け、温泉だ海外だと遊びまわってた。
叔母の夫に対してもそう。ギャンブル好きであればあるだけ使ってしまうと分かってるのに家の物を売ったりして金を工面した。
私たちには厳しく、家の手伝いも習い事も勉強もさせるが、従兄弟には何もさせないで、お菓子やお小遣いをあげまくり、お友達とケンカしたと聞けば「従兄弟ちゃんは何も悪くないわよ、お友達がおかしいのよ」と言い、夏休みの宿題も「従兄弟ちゃんはこんな事しなくていいのよ」と、母がやってあげていた。
叔母にも子供や人付き合いについて愚痴られても
「あなたが全面的に正しいわ。悪いのは相手、学校よ」
と言い、叔母は今で言う立派なモンペに。
私は朝起きて手伝いをして、午前中いっぱい勉強をする事になってたんだけど、ある日、私が嫌になって「従兄弟君ばっかり大事にして!」と怒ったら
「これはあなたの為なのよ」
とガンとして譲らなかった。
当然、従兄弟は落ちこぼれる。
叔母も塾に行かせようとするけど、我儘放題、嫌な事は何もしなくていいと育てられた従兄弟は当然拒否。
小学生で高脂血症に高コレステロール脂肪肝。
ダルマみたいに太り、叔母もちょっと低カロリー食を与えるがブチ切れる。
家に「何とかしろ!」と怒鳴りこんできたが、母は「アラアラ」と受け入れ「ママには内緒よ」とお菓子やカップめん三昧。
ほどなく従兄弟は友達に苛められたと登校拒否になり、気に食わないと暴れまくる。
子供でも体重が大人並みなんで破壊力抜群で、手加減なんて知らないから叔母は顔に傷やあざを作ってた。
叔母の夫は軍資金を手にギャンブルに溺れ、借金まみれになり、無職の自称プロパチンカス。
そしていつの間にか叔母の夫は居なくなってた。
叔母はこの頃にはもうミイラのようになっていて、父に頼ってきた。
が、すでに祖父母は亡く、家の実権は母が握ってたため援助を拒否。
昔のように高圧的に来たけど、完全に立場逆転。
鼻で笑って追い返し、叔母は自分の置かれた立場を実感してかフラフラと帰って行ったそうだ。
今従兄弟は高齢ニートの暴君になり、近所に響くようなどなり声をあげては叔母に暴力をふるう、家を破壊するなどしてる。
大体、ここまでが頭おかしくなる前の母と、父から聞いた話と自分の記憶で補完した話し。
その辺りから母がおかしくなった。
なんかずっと笑ってんの。
たまに金切り声で「ヒャーッハッハッハッハッハ!」とか腹抱えて笑ってんの。
かと思うと鬼の様な形相で壁を睨んでたり。
何かと言えば思い出し笑いをしたり、怒ったりと尋常じゃない。
例えば風でカーテンが揺らいだのを見て、父に
「あなたの親に二階から布団投げつけられたわね。あのクソババァもだけど止めなかったあんたが憎い」
と言いだし、
「憎い憎い憎い」
と呟きながらまな板に包丁ガンガン叩きつけ出した。
(落ちてくる布団をよけて転んだ時、カーテンが見えたらしい。それで思い出したんだと)
もう日常生活が立ちいかなくって、しょうがなく病院に行くと即入院。
病院の廊下で、疲れきって父に「なんでこんな事になったんだろうな」と呟いたら
父は泣いて「俺が悪いんだ」って言いだした。
ま、そりゃ悪いよね…と思ってたら衝撃の事実を聞かされた。
妹が亡くなった時、母は確かに目を離したんだがその時歩行器に乗せていたんだそうだ。
それを連れだしたのは祖母と叔母。
そして祖母が転倒し、足をくじいたので妹から目を離し、ハッと気が付いたら妹が居ない。
そして探したら用水路に…
祖母は高齢、叔母は未婚と言う事で親族会議の結果、全会一致で母のせいにした。
母の身寄りは年老いた実母のみ、もし言う事を聞かなかったら追い出す、子供は置いていけ、お前の親に仕送りしてやるから言う事聞け、と散々脅迫したらしい。
仕送りが無ければ母方祖母は生きていけない。
子供たちにも会えないと母は涙をのんだそうだ。
そして叔母は逃げる様に結婚。
近所の人も事情を知ってるから、あまりいい縁談ではなかったがえり好み出来なかった。
きっとこれを逃したら、っていう焦りもあったと思う。
昔の行き遅れは辛いからね…
とはいえほとぼりが冷めたと思ったのか、しゃーしゃーと実家に入り浸ってたけど。
ほんっと図太い女だよ。
驚いて
「でもあの人たち、いっつもいっつもお母さんが殺したって言ってたじゃない!」
と言ったら、父は
「俺が悪かったんだ…どうかしてたんだ…」
とだけ。
もちろん父の前でも言ってた。
「お前は子殺しを貰っちまったな」とか。
でも父は何も言わなかった…
「お前最低だよ」って言ってそれ以来父とは連絡取ってない。
祖父母の法事も行かなかった。
母のお見舞いには行くけど、会える日と会えない日があってね。
事実を知った時、
「なんでそんな人の子供にあんなに優しくしたんだろう」
って思ってたけど、どっかのスレで「優しい虐待」という言葉を聞いて納得した。
にっちもさっちもいかない状況で、自分と実母の身を守りつつ、祖父母と叔母の機嫌も取りつつ、効果的な復讐をと考えたのがこれか…。
背水の陣とでもいうか、何というか。
母の年で言えば「お婆ちゃんっ子は三文安」かな。
でも結果的に母が従兄弟と叔母の人生を狂わせた訳だよね。
まあ親がクソババァとパチンカスギャンブラーだから、元々素質はあったんだろうけど。
ははいったいどれ位長い間、どんだけどす黒い物を抱えてたんだろうなぁ…
しかもやり方が周到だし…
その辺が正直背筋が寒くなる。
でも子供を殺されて、その罪を着せられた女ってのはこういう物なのかもしれない。
そしてその親に育てられて、血が繋がってる自分が…
書き方悪くてごめん。
母に対しては何も思ってない。
そう言われてはいたけど、それを信じてしまっていた事を謝りたい。
憎いのは母を壊した祖父母と叔母、それに父。
父は憎い。
祖父母も叔母も憎い。でも父が一番憎い。
父方の血を取りだせるものならそうしたい位だよ。
あと兄弟なんだけど、皆事実を知って父とは疎遠になった。
その当時、兄は一年生だったんだけど、その時の記憶がすっぽりと抜けてるらしい。
「まるでハサミで切ったみたいに」記憶が無いんだって。
家に帰った後、何か大変な事が起きたみたいだと思い、
次の記憶が近所の人が家の前から道路に向かって走ってる所。
そしてまた次の記憶は数日後であろう末妹のお葬式の為にスーツを着せられてる所。
次は黒いスカートと白いブラウスを着た私と手を繋いで、どこかの建物の廊下を歩いてる。
そして次は夜、私と一緒に寝てる弟を見てる、って感じ。
何となく「夜なのに人がたくさんいる」って思ってたんだって。
その時の記憶は何か映画とかドラマとか見てるような、凄く他人事みたいなんだって。
辛い記憶を思い出さない様に、そういう事はあるらしい。
防衛本能ってヤツ?
確かに私たちは母に守ってもらえたな。
あの時は従兄弟みたいに甘やかされたいって思ってたけど、本当の愛情ってそうじゃないもんね。
ちなみに祖父が死んだ時は知らないけど、祖母が死んだ時、父が家土地のみ継いで残りは全部叔母にやったらしい。
高価な着物も、帯止めも、宝石も、土地も、畑も全部。
更に母屋の奥の庭も売って潰して駐車場になった。
「後生大事に取っておいた家宝や先祖伝来の土地は全部あの(叔母夫)さんが売っぱらって、今じゃ他人の物だよ。一体いくら分パチンコなんかになったのかね」
と目が笑ってない笑顔で言ってた。
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